理系東大生の読書メモ

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【最後は前向きになれるよ】爽快系青春小説「GO」

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 こんにちは。タウリです。

 

読書してますか?

 

今日は金城一紀の小説「GO」です。

 

この本の概要

①概要

著者は金城一紀氏。この本の主人公と同様、幼少期は朝鮮学校に通い、のちに朝鮮籍から韓国籍、日本籍に変更したという来歴を持ちます。

 

本書は直木賞作品です。(個人的に直木賞の作品は好きなものが多いです。)

 

著名作品として、「レヴォリューションNo.3」やドラマSP」の脚本などがあります。

②差別と闘う在日韓国人の主人公

 この物語の時代は戦後しばらくした頃でしょうか?日本本土に連れてこられていた朝鮮人の中には、終戦とともに母国に帰っていく者もいました。

 

一方で日本に残った主人公の「杉原」とその父母がこの物語のメインです。

 

「杉原」は朝鮮学校に通っていましたが、父の「広い世界を見ろよ」という言葉で、民族学校ではなく都内の男子校に進学することにしました。

 

高校では、「在日」と攻撃の対象にされることが多くなった「杉原」ですが、元ボクサーの父に鍛えられたケンカの強さで挑戦者を次々撃退。

 

「杉原」はどれだけ差別を受けようとも、差別をする日本人が悪いと考え、落ち込んだりするタチではありませんでした。

③主人公の恋とアイデンティティへの葛藤

そんな「杉原」が、同級生のパーティである女の子と運命的な出会いをします。

 

どこかミステリアスな「桜井」という女の子と「杉原」はその後デートを続け、お互いに惹かれあっていきます。

 

しかし「杉原」は自分の出自について「桜井」に話すことがなかなかできませんでした。もちろんそれはそれが理由で嫌われてしまうことが怖かったから。

 

「桜井」は「杉原」にとって初めての「大事にしたい日本人」だったのです。

 

「桜井」との初めての夜を前にして、「杉原」は自らが「在日韓国人」であることを明らかにします。

 

「桜井」がそんなことを気にもしないことを期待した「杉原」でしたが、帰ってきた返事は「No」

 

「桜井」の父親が「韓国や中国の男とは付き合うな、血が汚いから」ということを「桜井」にいつも言っていたようでした。

 

しかし「桜井」自身が「杉原」のどこに惹かれていたのかを自問自答し、そこに「杉原」のバックグラウンドは関係がないことを悟り、再び「杉原」の下へ戻っていくというストーリーです。

おすすめポイント

本当の自分って何かを考える時間

この本でテーマとなる「差別」ですが、その根源が何であるのかが本文中で考察されています。

 

例えば「日本人」「朝鮮人」の違いは何かということについて、

・親が日本人かそうじゃないのかが関係するのか

・ひいおばあちゃんが朝鮮人でも、その子は日本人といえるのか

・「桜井」という名前は中国から移動してきた人たちの持つ名前とされているが、それはどうなのか

・もっとさかのぼると、縄文人がいた日本に、大陸からやってきた弥生人が混ざってできている現在の日本で「日本人」「大陸人」の区分はできるのか

など具体的に考えています。

 

そして結論として、人類は元をたどればアフリカで生まれたある一つの個体に拠るので、国籍で分ける意味なんてあるのかという考えが述べられています。

 

このような視点も、主人公の「杉原」と同じ来歴を有する筆者だから描けた内容なのでしょう。

明るい文章

「差別」をテーマにしているため、どうしてもうつうつとした文章になりがちな気がしますが、心配することなかれ。

 

是非読んでみていただきたいです。

 

気に入った一節

「別にいいよ、おまえらが俺のことを 《在日》って呼びたきゃそう呼べよ。おまえら俺が怖いんだろ?何かに分類して、名前を付けなきゃ安心できないんだろ?でも、俺は認めねえぞ。俺はな、《ライオン》みたいなもんなんだよ。《ライオン》は自分のことを《ライオン》だなんて思ってねえんだ。お前らが勝手に名前を付けて、《ライオン》のことを知った気になってるだけなんだ。それで調子に乗って、名前を呼びながら近づいてきてみろよ、お前らの頸動脈に飛びついて、噛み殺してやるからな。分かってんのかよ、おまえら、俺を《在日》って呼び続けるかぎり、いつまでも噛み殺される側なんだぞ。悔しくねえのかよ。言っとくけどな、俺は《在日》でも、韓国人でも、朝鮮人でも、モンゴロイドでもねえんだ。俺を狭いところに押し込めるのはやめてくれ。俺は俺なんだ。いや、俺は俺であることも嫌なんだよ。俺は俺であることからも解放されたいんだ。俺は俺であることを忘れさせてくれるものを探して、どこにでも行ってやるぞ。この国にそれがなけりゃ、おまえらの望み通りこの国から出てってやるよ。お前らにはそんなことできねえだろ?おまえらは国家とか土地とか肩書とか因襲とか伝統とか文化とかに縛られたまま、死んでいくんだ。ざまあみろ。俺はそんなもの初めから持ってねえから、どこにだって行けるぞ。いつだって行けるぞ。悔しいだろ?悔しくねえのかよ・・・。ちくしょう、おれは何でこんなこと言ってるんだ?ちくしょう、ちくしょう・・・」

(「在日」だと突き放した「桜井」と久しぶりに再会した「杉原」が)

Twitterでの評判

まとめ

いかがでしょうか?

 

前回と打って変わって、さわやかな作品です。

 

次回もお楽しみに!

 

タウリ